出版の目的


言語の意味の研究の中でも、形式意味論 (論理意味論) はその要をなすものです。意味を論じるのに単なる言葉の言い換えを行って済ますのでなく、言語表現をそれと接しつつも外部に存在する意味の世界とつないで理解するための数少ない手段の一つであると言えます。日本語を取り上げたこの分野の研究も近年盛んになっています。しかし、形式意味論について前提知識を持たない人が学べる日本語で書かれた入門書はこれまでありませんでした。この本は元々は大学での授業のために書いた資料から出発していて、教科書として使用されることを想定していますが、自習書としても使えるように構成を工夫しました。

言葉は意味を伝えるためにこそあり、意味論を学んで初めて言語の働きの全体像を知ることができます。言葉に関心を持つ人には、一度は形式意味論の世界に触れてほしいと思ってこの本を書きました。