お礼の言葉


2015年8月3日

吉本 啓

東北大学 高度教養教育・学生支援機構/国際文化研究科


今年8月に私が60才になることから、8月1日に異文化間教育論講座の学生や卒業生、スタッフの皆さんが集まって、還暦記念パーティーを開いていただきました。また、当日出席できない方々を中心として、素敵なプレゼントやメッセージをいただきました。心からお礼を申し上げます。私にとって、約20年前に東北大学に赴任して以来、もっともうれしい出来事でした。

思い起こしてみると、私が大学院生であった頃は、自分のやりたいことをどう進めていいのか自身を持てず、また周囲にも理解してもらえず、苦しい時が続きました。当時のことを考えると、今まで研究を続けることができ、またこれだけ多くの人々にお祝いしてもらえたということは、まったく夢でも見ているような気がします。どうしてこんな「うれしい誤算」が生じたのかとつくづく考えてみたのですが、やはり出会う人に恵まれたからだ、という結論に達しました。

東京、大阪、シュトゥットガルトと居場所を変えるたびに新しい知己を得て環境の変化を乗り越えることができ、また大きな影響を受けました。特に、シュトゥットガルト大学の恩師のクリスチャン・ローラー先生からは、研究者および教育者として世に立つ上での根本を教えられました。

96年に東北大学に来てみると、そこは「象牙の塔」というレッテルとは裏腹に、何が飛び出してくるか分からないサファリ・パークのようなところだという感想を抱くようなこともありましたが、学生諸君と触れ合う時には、頭上に青空が広がっていくような爽快感を覚えました。年々新しく入ってくる学生の真剣な取り組みを見るにつけ、心身にいつの間にか張り付いたサビが消えるのを感じます。そういう時、教師というのは得な職業だなと思います。

言語学の教育と研究を続けていくには厳しい状況も出て来てはいますが、次の世代に手渡せるようなしっかりしたものを作るために、まだもう少し与えられた時間を使いたいと思っています。どうぞ皆さんの協力をよろしくお願いします。

学会などで再会する時を楽しみにしています。また、仙台に来ることがあれば、ぜひ気軽に立ち寄って近況をお知らせ下さい。12月には地下鉄東西線が開通して、仙台駅からのアクセスが便利になります。

最後になりましたが、皆さんのご健康と繁栄を心から祈っております。